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雨の日の頭痛は気のせい?

〜脳と天気の不思議な関係〜

院長 豊山弘之  2026年6月

「雨が降る前になると頭が重くなる」

「台風が近づくと決まって頭痛がする」

「天気予報を見る前に、体が先に雨を感じてしまう」

そんな経験をされたことはありませんか。

梅雨の時期や台風の季節になると、外来では「先生、これは天気のせいでしょうか?」と相談される患者さんが増えてきます。

かつては「気のせい」と片付けられることもありましたが、近年では「気象病」「気象痛」として、その仕組みが少しずつ解明されてきました。

私たちの脳や神経は、想像している以上に繊細で、静かに周囲の変化を感じ取っています。

今回は、雨と頭痛、そして脳との不思議な関係についてお話ししたいと思います。

原因は耳の奥の「気圧センサー」と「自律神経」

なぜ天気が崩れると体調に影響が出るのでしょうか。

私たちの耳の奥にある「内耳」には、気圧の変化を感じ取るセンサーのような役割があると考えられています。

低気圧が近づくと、このセンサーが反応し、体のバランスを整えている「自律神経」に影響を及ぼします。

その結果、頭痛だけでなく、めまい、だるさ、眠気など、さまざまな不調が現れるのです。

雨が降る前に古傷が痛む、気分が落ち込む――そうした変化も、実は脳と神経が環境を敏感に感じ取っているサインなのかもしれません。

「片頭痛」のメカニズムと進歩する治療

気圧の変化によって特に影響を受けやすいのが「片頭痛」です。

以前は、片頭痛は血管が拡張することで起こると考えられていました。しかし現在では、脳の痛みを伝える「三叉神経」が過敏に反応することが大きな原因だと分かってきました。

この神経が刺激されると、「CGRP」という物質が放出されます。

CGRPは血管を拡張させ、周囲に炎症を起こすことで、あのズキズキとした痛みを引き起こします。

最近では、このCGRPを標的とした新しい治療薬が登場し、片頭痛診療は大きく進歩しています。

「体質だから仕方がない」と我慢していた方でも、以前よりずっと症状をコントロールしやすい時代になってきました。

ただし、「危険な頭痛」には注意を

一方で、天気による頭痛と思っていた中に、重大な病気が隠れていることもあります。

突然、これまで経験したことがない激しい頭痛

手足のしびれ

ろれつが回らない

言葉が出にくい

意識がぼんやりする

このような症状を伴う場合には、くも膜下出血や脳卒中など、命に関わる病気の可能性があります。

「いつもの頭痛と違う」

そう感じた時には、どうか無理をせず、早めに脳神経外科や頭痛外来を受診してください。

おわりに

雨の日は、街の音が少し静かになります。

その静けさの中で、私たちの脳や神経は、空気の変化や湿度の揺らぎを敏感に感じ取っています。

頭痛はつらい症状ですが、それは脳や体が発している小さなサインでもあります。

「いつものことだから」と抱え込まず、ときには医療の力を借りながら、ご自身の体と上手に付き合っていければと思います。

雨音が少し穏やかに聞こえる、そんな季節になりますように。

Photo by Hiroyuki Toyama

【参考文献】

・頭痛の診療ガイドライン2021(日本頭痛学会・日本神経学会)

・Ashina M. Migraine. N Engl J Med. 2020.

・Goadsby PJ et al. Pathophysiology of Migraine. Physiol Rev. 2017.